家族で話そう、わが家の避難計画:ハザードマップと避難場所を無理なく確認するコツ
忙しい毎日でも、家族の「もしも」を考える第一歩
共働きで幼いお子さんを育てている皆様にとって、日々の生活は時間との戦いではないでしょうか。家族の安全は最優先事項と理解していても、防災対策にまで手が回らない、何から始めて良いか分からないというお声もよく耳にします。特に、災害時に家族が一緒にいない時、どこに避難し、どう連絡を取り合うかといった具体的な計画は、後回しになりがちかもしれません。
しかし、いざという時に慌てず行動するためには、事前の話し合いと準備が何よりも大切です。この記事では、忙しい皆様でも無理なく取り組める「家族での避難計画」について、ハザードマップの活用方法から避難場所の確認、連絡手段の確認まで、具体的なステップとヒントをご紹介します。小さな一歩から、家族の安心を着実に築いていきましょう。
なぜ、家族で避難計画を立てることが重要なのか
災害はいつ、どのような形で発生するか予測がつきません。地震、洪水、土砂災害など、地域によって想定されるリスクも異なります。家族全員が一緒にいる時に災害が起こるとは限らず、日中にそれぞれ学校や職場にいる状況も考えられます。
このような「もしも」の時に、家族が事前に共通認識を持っていれば、落ち着いて行動し、互いの安否を確認することができます。計画を立てることは、単に場所を決めるだけでなく、災害に対する心構えを育む上でも大切なことです。
まずはここから!ハザードマップの確認方法とポイント
ハザードマップは、お住まいの地域で予測される災害の種類と、その危険が及ぶ範囲を示した地図です。自治体のウェブサイトや窓口で入手できます。
ハザードマップで確認する主なポイント
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自宅や学校、職場の周辺リスク:
- 液状化の可能性のある地域ではないか。
- 河川の氾濫や高潮、津波浸水の危険区域ではないか。
- 土砂災害警戒区域に該当していないか。 これらの情報を確認することで、ご自身や家族がどのような災害リスクに直面する可能性があるのかを把握できます。
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指定緊急避難場所と指定避難所:
- 指定緊急避難場所:災害の危険から一時的に身の安全を確保するための場所(例:公園、広場、頑丈な建物)。
- 指定避難所:自宅に戻れない場合に、一定期間生活を送るための場所(例:学校の体育館、公民館)。 これらの場所は、災害の種類によって適した場所が異なります。例えば、洪水時には浸水区域外の高台の施設が指定されるなど、状況に応じた場所を確認しておくことが大切です。
忙しい中でも、まずは自宅周辺のハザードマップをざっと眺めるだけでも構いません。お子さんと一緒に「ここはお家だね、ここには川があるね」といった会話をしながら地図を見ることで、自然と防災意識を高めることにもつながります。
家族で決める、わが家の避難場所・避難経路
ハザードマップで地域の危険性を把握したら、次に家族で具体的な避難計画を立てましょう。
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複数の避難場所を検討する:
- メインとなる避難場所だけでなく、災害の種類や状況によって利用できない可能性も考慮し、サブの避難場所も複数決めておきましょう。
- 自宅から近い場所だけでなく、少し離れた場所も視野に入れることが大切です。
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避難経路を実際に歩いてみる:
- 家族で実際に避難経路を歩いてみましょう。日中の明るい時間だけでなく、夜間の状況も想定しておくと良いかもしれません。
- 子どもと一緒に歩くことで、「ここには高い塀があるから地震の時は気をつけようね」「この道は広く安全だね」といった具体的な注意点を確認できます。
- この時、スマートフォンで経路を写真に撮ったり、簡単な地図を作成したりするのも有効です。
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危険な場所を避ける:
- 避難経路の途中にある、ブロック塀、自動販売機、ガラスの多い建物、老朽化した建造物、電柱など、倒壊や落下物の危険がある場所を避ける経路を選びましょう。
- 狭い路地や車両通行量の多い場所も避けることを検討してください。
いざという時の連絡方法と集合場所
災害時に家族がバラバラの場所にいる場合、安否確認や合流が重要になります。
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安否確認の手段を決める:
- 災害用伝言ダイヤル171:電話番号を登録すると、安否を音声で確認できるサービスです。使い方を家族で練習しておきましょう。
- 災害用伝言板(web171):インターネット上で安否情報を文字で登録・確認できます。
- 携帯電話会社の災害用伝言板サービス:各携帯電話会社が提供しています。
- SNSの活用:LINE、X(旧Twitter)、FacebookなどのSNSも情報共有や安否確認に役立ちます。災害用アカウントやグループを作成するのも良いでしょう。
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一時集合場所を決めておく:
- 家族それぞれが安全な避難場所に着くまでの間に、一時的に合流する場所を決めておきましょう。自宅が被災した場合に備え、自宅から少し離れた公園や商業施設などを指定すると良いでしょう。
- 「〇〇公園のブランコの下」「スーパーの入り口」など、子どもにも分かりやすい具体的な場所を設定することがポイントです。
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子どもへの伝え方:
- 「もし地震が来たら、先生の言うことを聞いて避難してね。そのあと、パパやママは〇〇(一時集合場所)で会えるように頑張るから、そこに来てくれたら嬉しいな」といったように、安心感を与えながら、具体的な行動を伝えることが大切です。
ご近所との緩やかな連携で、さらに安心を
防災対策は、家族だけで完結するものではありません。地域との緩やかな繋がりが、いざという時に大きな助けとなります。
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日頃からの挨拶や声かけ:
- 特別なことをする必要はありません。日常的な挨拶や、子どもの見守り、道での簡単な声かけといった、何気ない交流を心がけましょう。顔見知りが増えるだけでも、災害時の安心感は大きく変わります。
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地域の情報にアンテナを張る:
- 自治体や地域の掲示板、回覧板、ウェブサイト、防災アプリなどで、地域の防災情報を確認しましょう。地域の防災マップや避難訓練の案内など、有益な情報が得られることがあります。
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地域の防災訓練やイベントへの参加:
- 年に一度の防災訓練や、地域のお祭りなど、気軽に参加できる機会を見つけてみましょう。訓練では、実際に避難経路を歩いたり、消火器の使い方を学んだりできる場合があります。また、地域の顔見知りを増やす良い機会にもなります。
- 参加が難しい場合でも、訓練の様子を遠目から見学するだけでも、地域の防災意識を知るきっかけになります。
小さな一歩が、未来の安心につながる
「家族で避難計画を立てる」と聞くと、難しく感じてしまうかもしれません。しかし、完璧を目指す必要はありません。まずはハザードマップを家族で一緒に眺める、災害時の連絡方法を一つ決める、避難場所を一つ選ぶといった小さな一歩から始めてみましょう。
大切なのは、家族で防災について話し合う機会を持つことです。話し合うことで、お互いの意識が高まり、いざという時の冷静な判断に繋がります。そして、日頃からのご近所との緩やかな繋がりが、大きな安心感となって家族の暮らしを支えます。今日からできることを見つけて、着実に家族の安全を育んでいきましょう。